聖石学園~意地悪で腹黒のナイト様~

ゲーセンにて

「あーこれ可愛い! お兄ちゃん取って!」

「ったく仕方ねぇなあ」

 色んな音が入り混じったゲーセン内で、その兄妹の声が耳に届いた。


「あーあ、あの兄妹はいつもラブラブなんだよなぁ」

 少し離れた場所で弘樹が言う。



 ゲーセンに入る前から、あの二人はカップルか? と思ってしまうほどベタベタしていた。


 ……何だろう……何か、モヤモヤする……。


 あたしはそんな二人を見ていたくなくて、高志と弘樹のほうにくっついて歩いた。


 

「な? 新しいゲーム、スカッとしただろ?」

 前に高志が言っていたゲームを三人でやった後、明るい笑顔で高志が言う。


「うん! 楽しかった。高志かなり高得点だったけど、もしかして練習したのか?」

 高志のおかげでさっきのモヤモヤした気分もすっかり消えたあたしは、心からの笑顔を向けた。


 すると高志は照れたように頬を掻く。

「ああ、実はいいトコ見せたくてさ。通いつめて練習してたんだ……。って、はは。これ言っちまったら意味ねぇよな」


 そう言ってはにかむ高志が、好きだと思った。


 もし女だってこと言えたなら、あたしは高志を男として好きになったんだろうか……?


 ううん。

 多分男としては好きになれない……。


 あたしにとって、高志はやっぱり友達でしかないんだな……。


 応えてあげられなくて、ごめんね……?


 あたしは、高志に笑顔を向けながら心の中で謝った。




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