聖石学園~意地悪で腹黒のナイト様~
「なっ!? このっ!」

「んぐぅ!?」

 片手で口を覆われる。


「っのヤロー。移動しなきゃなんねぇじゃねぇか……」

 そう言った田代先輩は、あたしの口を押さえたまま片腕であたしを抱きかかえ、もっと離れた場所に移動しようとした。

 もちろんあたしは暴れる。


 せめてさっきの叫びで気付いた人がこっちに来てくれるまでは!


「くっこのっ! 暴れんなブルートパーズ! てめぇは大人しく俺にヤられてればいいんだよ!」

「ふぬんむぐー!! (ふざけんなー!!)」


 黒斗の闇に触れたからだろうか……。

 田代先輩への恐怖は最初だけで、今はそれほど無い。

 むしろ田代先輩には怒りの念しか湧かない。



「っこの! はなせー!」

 暴れて口を押さえていた手がずれた。
 そのスキにまた叫ぶ。

「っこの! 黙れっつって――ぅが!」

 突然、田代先輩がうめき声を上げてそのまま倒れた。

 あたしの体から、田代先輩の手が離れる。


「懲りてなかったんだな……。今度は確実退学だ」

 背後で田代先輩とは違う男の声が聞こえた。

 これは――。


「黒斗!?」

 あたしは振り返りながらその人の名を呼んだ。


 黒斗は、田代先輩に向けていた視線をあたしに向ける。

「お前も懲りてねぇな。他の奴にも散々一人になるなって言われてただろ?」


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