聖石学園~意地悪で腹黒のナイト様~
「ぅ……もぅ! そう! あたし嫉妬してたの!」

 耳を舐められて、そのままヘンな気分になる前にと叫ぶように言った。

「黒斗が女の子にモテてたから! あたし、黒斗のこと独り占めしたいって思っちゃって……」

 それ以上あたしは言葉を続けられなかった。


 独り占めしたいなんて言って、束縛したがってると思われたかもしれない。

 ウザイ奴だって、思われたらどうしよう……。


 そう思うと、涙が滲んで言葉が出てこなかった。

 黒斗の顔も見ることが出来ない。


 でも、当の黒斗は嫌がるどころか嬉しそうに――。

「よく言えました」

 と言った。


 そしてうなじの辺りを掴まれ、すぐにキスをされる。

 吐息さえも奪われ、クラクラするような深いキス。


「んっ……はぁ、黒斗っんんぅ」


 あたしの全てを求めるかのようなキスが嬉しくて、あたしは黒斗の背に腕を回してしがみついた。

 あたしも黒斗を求めてるんだって、教えるかのように……。


 しばらくお互いに唇を求め合った後、黒斗は甘く囁いた。


「俺はいっつもお前を独り占めしたいって思ってるんだ。お前も同じこと思ってくれてるならこんなに嬉しいことはねぇよ」

「黒斗……あた――」


 “あたしも嬉しい”

 そう言葉を紡ごうとした唇はまた黒斗に塞がれてしまった。


 今度は黒斗もあたしの体を抱き締めてくれて……。

 あたしは黒斗の香りに包まれて幸せを感じた。








 この後、お母さんの話のおかげでこの幸せが一変するなんて思いも寄らずに……。


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