聖石学園~意地悪で腹黒のナイト様~
 嬉しくて、愛しくて。

 あたしは泣きながら黒斗に抱きついていた。


「うぅっ……。嬉しいっ、ありがとっ」


 あたしも、出来るなら黒斗と離れる時間が多くなるのは避けたかった。

 それだけが、仕事を請ける上での悩みだった。


 だからその悩みが解消され、あたしの心は翼が生えたかのように軽くなる。


 今なら、どんなことでも出来る気がした。





 しばらくして、あたしの涙も少し落ち着いてきた頃、お母さんが咳払いをする。

「コホンッ……。あんた達見せ付けてくれるわね……」

 見てるこっちが恥ずかしいとばかりに言われ、あたしは慌てて黒斗から離れる。

 涙を拭い、顔を真っ赤にした。


 うわっ、お母さんの存在途中から忘れてた……。


「まあいいわ。何にせよ、二人ともこれから忙しくなるわよ。弱音なんか聞かないから頑張りなさい!」

 そのお母さんの言葉に、あたしは目を閉じもう一度決意する。


 この先どんな苦難があっても、今のこの気持ちを忘れないために。

 そして目を開いて、お母さんに告げた。



「はい! 社長!!」



 
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