死が二人を分かつまで
大学にもバイトにも行かず、数日間、一日中アパートに引きこもった。


今日が何日で、今が昼なのか夜なのか、分からないほど自分を見失った。


しかし、絶望の淵にいる進藤の耳に、ふと、明美の言葉が蘇る。


『お父ちゃんとお母ちゃんが悲しむよ』


都会で暮らす息子に仕送りする為に、身を粉にして働いてくれている愛しい人達。


『何をやってるんだ、俺は……』


人間というのは、どんなに傷ついても日常の波に揉まれていくうちに立ち直れるようにできている。


他人を慰める時の常套句だが、その言葉に縋るように、進藤は次の日から無理矢理日常へと復帰した。


傍から見たら、まるで廃人のようであっただろう。


同級生はギョッとしたように彼に近付いて来ると「大丈夫か!?医者行ったのか?」と聞いてきた。


体の不調でそうなったのだと勘違いしたらしい。


むしろ好都合だったので、周りにはそう思わせておいた。


最初は辛かったが、確かに忙しくしていれば、余計な事を考えずに済んだ。


忘れたふりをすることが出来た。
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