死が二人を分かつまで
昼休みが終わり、進藤は自分のデスクへと戻ると作業を再開した。


テンキーを叩く指が先ほどよりも軽快に動いた。


「部長。こちら、確認印お願いします」

「ああ」


進藤は部下である女性社員から差し出された書類を受け取り、デスク上の保留箱に入れた。


すぐに目を通すものもあるが、書類の種類によっては一旦そこに入れておいて、後程まとめて処理するのだ。


引き続き入力作業を続けていたが、目の前の人影が無くならないので不思議に思い見上げると、女性社員は微妙な表情で彼を見つめている。


「ん?何?」

「あ、すみません!何でもないです!」


彼女は慌てて自分のデスクまで戻ると、席に着きつつ、隣の同僚にコッソリと耳打ちした。


「今日の部長、やっぱり変よ~。今度はすごい顔がニヤケてんの!」


部下にそんな風に言われている事など露知らず、進藤は快調に仕事をこなし定時で退社すると、予定通り駅でさとしと落ち合った。


そのまま、以前二人で立ち寄ったあの食堂で夕飯を食した。


しかし、そこでは長時間話せるような雰囲気ではないし、内容も内容である。
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