死が二人を分かつまで
一言一句丁寧に、諭すように、弟に向けて言葉を紡ぐ。


「神様に向かって本気で、『命の炎が消えるその瞬間まで、どうかこの人と一緒に居させて下さい』って願わずにはいられない、そんな恋をしなさいって言ってんの」


苦笑いしている進藤の顔を見ながら明美は続けた。


「あんたが結婚しないのは、あの人が忘れられないから?」


突然改まったその口調、表情に、進藤はドキリとする。


「私のこと、恨んでるよね……」

「いや、だから、姉貴のせいじゃないよ。言っただろ」

「そうじゃなくて」


明美は静かに首を振った。


「結果は関係ないのよ。あの時のあんた達の恋心を、思いっきり否定しちゃったからさ」


遠い目をしながら、明美は続ける。


「あの頃の私はまだまだ子どもだった。世間の事を良く知らないままに21歳で結婚して、ずっと狭い世界で生きて来た。だから小夜子さんを見た時、怖くなっちゃったの。何て華やかな女性なんだろうって」


明美の脳裏に、当時進藤が住んでいたあのアパートの玄関で、彼女を初めて目にした時の衝撃が甦る。


紺色のジャケットと、白いフレアースカートという地味な出で立ち。
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