死が二人を分かつまで
「その代わり、自分自身にも厳しい人ですから。祖父も伯父も公務員なので、余計に規律という物に敏感になったのかもしれません」


一瞬間を置いてからさとしは続けた。


「でも、もしかしたら、僕が傍にいるのが気詰まりで、それで家を出ろと言ったのかも……」


そして寂しそうな表情になる。


「あ、こんな事言っちゃダメですよね」


気を取り直すように微笑むと、さとしはリュックからおもむろに何かを取り出した。


「これ、僕の宝物なんです」


どうやらハガキのようだ。


丁寧にラップで包み、さらにクリアファイルに入れてある。


「見て良いのか?」


「はい」


受け取って視線を走らせると、表にさとしの実家の住所と、【小谷大助、千代、広様】という宛名が書いてあった。


広は伯父であるから、あとは、おそらくさとしの祖父母の名前だろう。


裏には『今ここに住んでいます。元気でやってるから、心配しないで。小夜子より』という短い文章と東京の住所が。


くせのない、とても綺麗な字だった。


「上京して一人暮らしを始めた母が、実家に近況報告のハガキを送ったんです」
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