死が二人を分かつまで
しかし、津田に金子をかまっている余裕はない。


「津田さん、寝ないんですか?」


眠気は完全に吹っ飛んでいた。


津田は自分のデスクにたどり着くと、上着と鞄を掴む。


「ちょっと、出てくる」


「え?出てくるって、どこに?」


それには答えずに津田は部屋を飛び出した。


エレベーターに乗り込みながら、急いでケータイを取り出す。


自分でも、何故飛び出して来たのか一瞬混乱したが、そうだ、このつもりで出て来たのだ、と遅ればせながら認識しつつ、ある番号を呼び出した。


『うまく、捕まってくれれば良いが……』


*****


数10分後、津田は、とある老舗のコーヒー専門店にいた。


大通りから1本入った細い路地にあり、その立地と薄暗い店内が隠れ家的な雰囲気を醸し出している。


ある人物と会う為、津田は先ほど連絡を取ったのだが、お互いが居た地点からそこで落ち合うのが一番適していたのだ。


先に到着した津田が、ソファーに深く腰掛け、目を閉じ、自分の頭の中を整理していると、いつの間にやら目の前に彼が座っていた。


相変わらず気配を感じさせない身のこなしである。


「お久しぶりです」


「久しぶり。悪いね、急に呼び出しちゃって」


「とんでもないです」


彼はふっと微笑んだ。
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