死が二人を分かつまで
しかし、それは進藤の理性を押さえ込むストッパーにはなってくれそうにもなかった。


こんな場面だというのに、自分の滑稽さにおかしさが込み上げて、進藤は思わずふっと笑いをもらしてしまう。


「……な?友達なんかじゃ、いられないんだ……」


さとしは答えなかった。


進藤がその隙を与えなかった。


右手でさとしの頬に手を添え、もう一度唇を重ねる。


初めての行為なのに、何故か進藤はとても懐かしさを感じた。


やはりさとしの中に、小夜子の面影を見ているのだろうか。


『いや。それは違う』


進藤は即座に否定した。


一生のうちで、一番輝いた恋だと思った。


自分が心から愛せる人は、きっともう現れないだろうと思っていた。


しかし、かたくなに閉ざされていた進藤の心の鍵を、さとしはあっさりと開けてしまった。


懐かしいのはきっと、これが運命だったから。


さとしと出会い、その唇に触れるのが進藤の運命だったから。


言い訳もごまかしも、もう彼の中には存在しなかった。


今なら胸を張って、宣言する事ができる。


『俺は小谷さとしを、一人の男として、心から、愛している』
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