死が二人を分かつまで
ようやく唇を離すと、さとしは息を乱しながら、グッタリと進藤に体を預けて来た。


「逃げるなら、今だよ……」


耳元でそう囁くと、さとしはピクリと体を震わせる。


しかし、それ以上の動きは見せなかった。


両手で頬を挟んで上を向かせると、一度ためらいがちに伏せられた瞳が、強い意志を持って進藤を見返して来る。


「どうして、逃げなくちゃいけないんですか?」



「……もう、後戻り、できないよ」


情熱に突き動かされて、さとしを強引に抱き抱えると、進藤はそのまま寝室の中へと移動した。


『ここにいる俺は、本当に俺自身か?』


進藤は自分で自分の行動が信じられなかった。


だけどあえて、我を忘れた振りをしておこう、と決心する。


神様はきっと許してくれる。


さとしをベッドの上に降ろし、そのまま覆いかぶさった。


「愛してるよ……。さとし」


額にかかる髪をかきあげ、そこにも口付けをする。


唇よりも、何故か心が震えた。


顔を起こし、さとしの瞳を見つめながら、進藤は魂を込めて囁いた。



「死が二人を分かつまで、決して君を、離したりしない」
< 192 / 254 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop