死が二人を分かつまで
苦悩


ケータイの着信音が鳴った。


津田のプライベートの方のケータイである。

もともと内蔵されている「プルルル」というシンプルな着信音。

携帯電話の機能のカスタマイズは、津田にはまったく関心の無い事であった。


帰路を運転中だった津田は車を路肩に停め、助手席に置いておいた鞄からケータイを取り出した。


ディスプレイを見て、鼓動が跳ね上がる。


調査会社の、彼からの電話だった。


『夜分に失礼します』


いつもながら低音の、洗練された彼の声。


「いや。こっちは24時間営業みたいなもんだから。……もしかして、もう調べがついた?」


『はい。報告書がたった今出来上がった所で。いつお渡しいたしましょうか?』


「だったら、できるだけ早い方がいい。今からでも大丈夫かな?」


『かしこまりました。私の事務所でよろしいでしょうか?』


「俺の方は問題ない。悪いね、こんな時間に」


『いえ。仕事ですから』


津田は20分後、彼の事務所に辿り着いた。


緑茶を出されたが、それには口を付けず、調査の報告を促す。
< 193 / 254 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop