死が二人を分かつまで
苦悩
ケータイの着信音が鳴った。
津田のプライベートの方のケータイである。
もともと内蔵されている「プルルル」というシンプルな着信音。
携帯電話の機能のカスタマイズは、津田にはまったく関心の無い事であった。
帰路を運転中だった津田は車を路肩に停め、助手席に置いておいた鞄からケータイを取り出した。
ディスプレイを見て、鼓動が跳ね上がる。
調査会社の、彼からの電話だった。
『夜分に失礼します』
いつもながら低音の、洗練された彼の声。
「いや。こっちは24時間営業みたいなもんだから。……もしかして、もう調べがついた?」
『はい。報告書がたった今出来上がった所で。いつお渡しいたしましょうか?』
「だったら、できるだけ早い方がいい。今からでも大丈夫かな?」
『かしこまりました。私の事務所でよろしいでしょうか?』
「俺の方は問題ない。悪いね、こんな時間に」
『いえ。仕事ですから』
津田は20分後、彼の事務所に辿り着いた。
緑茶を出されたが、それには口を付けず、調査の報告を促す。