死が二人を分かつまで
「穏やかな、綺麗な顔してるわね」


「小夜ちゃんは器量良しだったもんねぇ」


普段とは異なる、厳かな雰囲気が漂うその一階の和室で、柩の中に横たわる小夜子の顔を覗き込みながら、しんみりと会話を交わす、黒い衣服に身を包んだ人々。


「若すぎるよねぇ。まだ、30歳なのに…」


一人の女性が言葉の途中で声を震わせ、握り締めていたハンカチで目尻を押さえた。


「ね、さとしちゃん。お母さん、綺麗だよね?」


訳が分からぬまま、周りの大人達の真似をして、眠る母の肩口に花をそっと置いたさとしは、ふいに自分の名前を呼ばれ、ピクリと体を震わせた。


傍らに寄り添う祖父と祖母を交互に見上げると、静かに微笑みながら頷いている。


その場に集まっている人々はさとしとは初対面だったが、皆小谷家の親類縁者であった。


さとしよりも長く、小夜子と関わって来た人物ばかり。


「お母さんはね、これから、天国に行くんだよ」


「てんごく…」


「うん。神様のいるところ。三途の川を渡ってね」


「え?川をわたるの?」
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