死が二人を分かつまで
進藤は勢い良く起き上がると、ベッドを降り、靴を履いていない事に気づかないまま駆け出した。


「あっ。ちょっとあなた!」


医師の制止の声を振り切り、廊下に出て闇雲に走り出そうとしたその時、正面から足速に歩いて来る津田の姿が目に入った。


「何やってんだあんた」


「さとしの所に連れて行ってくれ!」


眉間に皴を寄せ、目の前に立ち塞がった津田に、進藤は縋るように抱き付いた。


その勢いのまま先に進もうとしたが、津田に身体を押さえこまれる。


「落ち着け。あんたが行ったって、何の役にも立たないだろ」


その腕の力とは相反する、とても静かで、穏やかな声だった。


「あんたも頭を打ってるんだから、ちゃんと検査してもらえよ」


そう言われた瞬間、思い出したように進藤の頭はまたズキズキと痛み出した。


「さとし…さとし…」



津田に腕を取られたまま、その場に膝を着き泣き崩れる進藤に、医師が近づく。


「進藤さん。さぁ、行きましょうか」


そして津田に代わって進藤の腕を取ると、抱き抱えるようにしながら立ち上がらせた。


そのまま進藤は診察室の中へと連れて行かれる。
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