死が二人を分かつまで
一瞬言葉に詰まったが、それを振り切り、津田は続けた。


「違いますよ。『息子みたいに可愛いがっている』という意味です。自分のせいで怪我を負わせてしまったと思って、取り乱しているんでしょう」


まだ本人達の心の整理がついていないのに、そしてその真実を受け止めるべき人物は他にもいるのに、ここで第三者に余計な事を告げる必要は無いと判断したのだ。


「そうですよね」


看護師は納得したように頷く。


「名字も違うし、お父様にしては若すぎますもんね。ただ、ちょっと似ていらっしゃるから、もしかしたら親戚の方かな、とは思ったんですけど」


「……いえ。全くの他人ですよ」


『現時点で、戸籍の上ではな』と、津田は心の中で呟いた。


「分かりました。あ、じゃあ、検査と治療が済むまで、そこのソファーでお待ち下さいね」


にこやかに微笑みながら、看護師は診察室のドアを静かに閉じた。


津田はため息をつきながらソファーへと近付き、腰掛ける。


今後の事を考えるととても気が重かった。


しかし、せめて今だけは心と体を落ち着けようと、彼は腕を組み、壁に背を預け、目を閉じた。
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