死が二人を分かつまで
「……俺の思いなんか、どうでも良い」


進藤は首を振りつつ答えた。


「さとしが怪我をしたと聞いた時、最悪の事態が頭をよぎった。自分のエゴを押し付けて散々泣かせたまま、別れる事になってしまうのではないかと」


その時の記憶が蘇り、再び進藤はゾっとする。


「だけどあの子は無事だった。助かった事が当然だとは思えない。きっと神様が、もう一度俺にやり直すチャンスを与えてくれたんだ。これからの俺の人生はさとしの為だけにある」


「もしかしたらさとしは明日にでも記憶を取り戻すかもしれない」


黙って進藤の言葉を聞いていた津田は、静かに口を開いた。


「もしくはその事は忘れたまま、また恋が始まってしまうかもしれない。その時お前は父親として、毅然とした態度で、あの子を突き放さなくちゃいけないんだぞ」


「ああ……」


「傍で見守ることは、別れることより辛いかもしれない。今離れた方が、深い傷を負わずに済むかもしれない」


津田は、一度伏せた視線を上げると、真っ直ぐに進藤を見た。
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