死が二人を分かつまで
担当タレントを自宅マンションまで送り届けた津田は、突然あることを思いついた。


はやる気持ちを押さえつつ、車を走らせる。


年季の入った雑居ビルに到着すると、建物前の駐車場に車を停め、エレベーターで3階へと向かった。


【柊音楽事務所】というプレートが貼ってあるドアをノックする。


すると、中から顔見知りのスタッフが顔を出した。


「突然すみません。先生いますか?」

「あ、はい。どうぞ」


「あれ~?津田ちゃん?」


部屋の奥のソファーに腰掛けていた人物が、驚いた様子で立ち上がった。


彼は、タグチプロダクションが所属タレントのボイストレーニングを依頼している作曲家である。


そして楽曲も提供してもらっている。


「おはようございます」


時刻はもう深夜に近かったが、津田は業界内で通例となっているその言葉を口にした。


「おはよう。今日は何か打ち合わせあったっけ?」

「いえ。ちょっとご相談したい事がありまして。お時間よろしいですか?」


言いながら、津田は柊の返事を待たずにビデオカメラを取り出す。
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