死が二人を分かつまで
金曜の夜。
進藤の降り立つその駅は帰宅組と、これから遊びに繰り出すのであろう人波が渦巻き、普段よりもさらに活気に満ちていた。
そういえば、と進藤は記憶をたどりながら苦笑いを浮かべる。
以前職場で「今日は花金だな」と何気なく呟いたら、新入社員に「それ何ですか?」と不思議そうに聞き返されてしまった。
確か進藤が高校生か大学生の時に流行った言葉で、たいていの会社が週休二日制度へと移行し、連休となる土日の前日の金曜日の夜は皆気分が浮き立つから「花の金曜日」と呼ばれ、さらにそれを縮めて「花金」となった。
てっきり慣用句のように定着した言葉だと思っていたのに、今の若い世代は使わないらしい。
あの一件で、進藤はやはり自分は40才間近で年相応の思考の持ち主であると自分で自覚したのと同時に、周りにも周知してしまったのだった。
そのやりとりを反芻しているうちに、意外に深く落ち込みそうになったので、気を取り直すように力強く歩を進める。
ふと、何か重要なものを見た気がして辺りに視線をさ迷わせた。
数メートル離れた斜め前を、見覚えのある若者が歩いている。
「君」
進藤が声をかけると、その人物が振り向いた。