死が二人を分かつまで
一刻も早く帰宅するべく、進藤は駅構内を早足で通りすぎた。


外に出た途端、頬を撫でた風の冷たさに、思わず肩をすぼめる。


ついこの間まで残暑の厳しい日が続いていたかと思いきや、季節は暦通り、初秋へとなだれこんでいたらしい。


特に夜の冷え込みを顕著に感じるようになった。

きっとすぐにコートなしではいられなくなるだろうな、と考えながら進藤は黙々と歩を進めた。


彼が利用している駅前には石畳が敷かれた広場があり、そこから、片側二車線の大通りまで遊歩道で繋がれていた。


広場の敷地内には等間隔に木製のベンチが置かれ、また、遊歩道の両脇には数種類の木々が植えられていて、その地面は芝生で覆われている。


ピクニック気分を味わったり散歩コースとして利用したりと、老若男女に活用されているスペースだが、今の時間帯は様々な芸を披露する若者達がたむろしていた。


踊る者、漫才をする者、歌をうたう者。


いくつものグループがあちらこちらに散らばり、道行く人々の足を止めている。


路上で自己表現する、こういう若者は時代が変わっても必ず出現する。
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