死が二人を分かつまで
若者はあまり口数が多いタイプではないようだ。

受け答えはきちんとするが、次から次へと言葉を繰り出したりはしない。


エネルギー消費を避けるため、必要な時以外は、あえて自分の気配を消しているのではないかと思えてくる。


もちろん、出会ったばかりの世代の違う人間と話すことなどあまりないだろうが。


「そうだ。名前聞いても良い?俺は進藤健一っていうんだけど」


年上の自分が会話をリードするべきと考え、進藤は質問した。


「あ、はい。僕は小谷さとしといいます」


「こたに…?」


進藤の鼓動は一瞬はねあがる。


「どうかしましたか?」

「あ、いや……」


ハッと我に返り、慌てて言葉を紡いだ。


「昔の知り合いで小谷さんて人がいたから」

「そうなんですか」


別に、さほど珍しい苗字ではない。


今までの生活の中でも、数回その姓を耳にしたことはある。


しかし、そのたびにうろたえてきたことを思い出し、進藤は自分で自分に舌打ちした。


広場の先、駅前の大通りには道路を挟んで複数の飲食店、コンビニなどが軒を並べている。


進藤はふと、小さな食堂の前で足を止めた。
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