死が二人を分かつまで
だいぶ昔に流行った男女の別れをテーマにした曲だった。


こんな若者がその歌をチョイスするとは、とても不思議な感じがした。


しかし興味を引かれたのは、それだけが理由ではない。


音楽の才能が無い者でも、本物に出会った時に、それに感銘できる能力は備わっている。


彼の歌声は明らかに凡人のものではないと判断できた。


いつもここを通っているのに気が付かなかった。

時間帯が合わなかったのだろうか?


色々と考えを巡らせているうちに、歌が終わってしまった。


もう少し早く帰宅できていれば……と悔やんでいると、周りからひときわ大きな拍手が起きたので、進藤もそれにならう。


「ありがとうございました」


若者は丁寧にお辞儀をすると後片付けを始めた。

「良かったよ」
「これからも頑張ってね」

声をかけながら去っていく人々に対して笑顔で応えている。


「ね、可愛くない?見に来て正解でしょ?」

「うん!歌もチョー良かった!」


近くで見物していた少女達が、心底楽しそうにはしゃぎながら去っていく。


確かに、歌うたいの若者はかなり整った顔立ちをしていた。
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