死が二人を分かつまで
津田は自分で自分の言葉にうんうんと頷いている。


「もちろん直接の原因ではないけど、その道に進んでいなければ違う人生だったかもしれないし」

「確かにそうかもしれません。でも…」

「でも?」

「母は自分の人生を後悔していなかったと思います」


さとしは控え目ながら津田の言葉に反論した。


「歌手としての母は知らないけど、病に倒れる前、記憶に残る母はいつも楽しそうに歌を口ずさんでいました。あんなに大好きだった歌を一時でも仕事にできて、きっとすごく幸せだったはずです」

「そうだな」


津田は満足そうに頷いた。


「だったら君も、後悔しない人生を送るべきだ」


何と、ここに至るまでの会話は誘導尋問であったらしい。


「つまらないことで立ち止まっている場合じゃないよ。これから起こるであろう数々の困難に比べたら、伯父さんと向き合うことくらい、どうってことない」


こういう刑事には取り調べを受けたくないものだ、と進藤は思わず見当違いな感想を抱いてしまった。


ふとさとしを見ると、彼は津田の視線を真っ直ぐに受け止めている。
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