死が二人を分かつまで
「歌い手の前では吸わないことにしてんだ。喉に悪いからな」


何も言っていないのに解説をしてきた。


「しかし、あんたとあの子の母親が知り合いだったとは驚きだよね」


「そう……ですね」


「小夜子さんとは、どれくらいの間一緒に働いてたの?」


「4…5ヶ月くらいですかね。親切にしていただきましたよ」


そこで進藤はふと、あることに気が付いた。


「そういえば、小夜子さんがバーを辞めたのはちょうど今くらいの季節だったな」

「へぇー。そうなの?」

「ええ。【体育の日】の直前だったから。もうそろそろですね」


今は9月の下旬である。


「よく覚えてるね~。そんな20年以上も前の、しかも他人の経歴を」


津田は感心したような声をあげた。


「正確には、21年前です。進学の為に上京して一人暮らしを始めて……。昭和最後の秋だったというのもあるけど、その年は自分にとって激動の一年だったから、思い出深いんですよ」


「ふ~ん。そんで、小夜子さんは仕事を辞めて旦那さんとどこかに引っ越してそこで新しい生活を始めた訳ね」
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