死が二人を分かつまで
長時間歌い続けると喉を痛めるので、所々ピアノだけの演奏を挟んでいた。


もちろん、ピアニストにも休息時間は与えられている。


プリズムは【ピアノバー】だ。


歌手の小夜子がいなくても看板に偽りはないが、しかし、店にとって、彼女の存在はなくてはならないものになっていた。


常連客のほとんどは小夜子目当てに通って来ていると言っても過言ではなかった。


歌声はもちろん、彼女の容姿は何ともいえず魅力的だったのである。


少し茶色がかった、ワンレングスのストレートのロングヘアー。


長い睫に縁取られた、黒目がちの澄んだ瞳。


高すぎず、低すぎず、上品に通った鼻筋。


適度にボリュームのある、濡れたようなばら色の唇。


そして、細身で長身の、バランスの良いスタイル。


この世の理想のパーツをすべて集めたような姿形をしていた。


彼女は自分から「ここで歌わせて下さい」と志願して来たらしい。


小夜子ほど魅力的な女性ならば、他に活躍の場はあるのではないかと進藤は思っていたのだが、その疑問に対する答えは後に明らかとなる。
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