死が二人を分かつまで
次の勤務日、進藤はいつもより30分早く出勤した。


店内は開店準備の最中であった。


進藤はいつも19時ちょっと前に入るようにしていたのでその時間に店にいた事はない。


下っ端が開店準備を手伝わなくても良いのだろうかと思ったが、「慣れてない奴にうろちょろされてもかえって邪魔なだけだから早く来るな」とマスターから言われていたのだ。


この前小夜子にきちんとお礼が言えなかったので、早めに店に行って開店前に話し掛けようと進藤は画策した。


「あれ?学生、どうした?」


テーブルの上を布巾で拭いていたマスターが、怪訝そうな表情で声をかけてくる。


「えっと、用事があって外出してて、それが済んだんでもう出勤しちゃおうと思って」


もちろん嘘である。


「あ、それ俺がやりますよ。マスターは他の準備をどうぞ」


「ああ、じゃあ…」


マスターは布巾を進藤に託すと、カウンターへと向かった。


プリズムは少数精鋭である。

オーナーでもあるマスターと、バーテンダー兼ウェイター、交替で入る皿洗いのバイト、そしてピアニストと歌手の5人で店をまわしていた。
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