死が二人を分かつまで
「あ。じゃあ、僕こっちなので」


遊歩道を抜け、駅前大通りの歩道を300メートルほど歩いたか。


多くの車が行き交う交差点で彼は立ち止まった。

向こう側に渡るらしい。

進藤はこのまま真っ直ぐだ。


「そう。じゃあ気をつけて」


あっさりと別れようとしたその時、彼が右手を差し出してきた。


「今日はありがとうございました。良かったら、また聞いていって下さいね」


つられて差し出した進藤の手をしっかりと握りしめてから、彼は去って行く。


何だかおもしろい雰囲気の子だな、と進藤は思った。


彼は昔から勉強もスポーツもそつなくできたので、不本意にも、いつも人をまとめるようなポジションに立たされてきた。


そのため、おっとりと自分のペースで動くようなタイプにはイライラさせられることが多かった。


しかし、なぜか先ほどの彼にはそういった感情は湧いてこない。


独特の間だが、愚鈍さは感じられなかった。


『きっと両親から、きちんとした躾を受けて育ったのだろうな』

心の中で呟きつつ、進藤は改めて家路を急いだのだった。
< 8 / 254 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop