死が二人を分かつまで
「強くなんかならなくて良い。そんなことに、慣れなくて良いよ」


自分でも、なぜか熱くなっているな、と思いながら進藤は続ける。


「だって、小夜子さんの仕事は歌を歌うことなんだからさ」


無言でじっと進藤を見つめていた小夜子の瞳が、みるみるうちに潤んできた。


「えっ?小夜子さん!?」


進藤は仰天して、思わず立ち上がる。


「ごめんね。泣かれたら困っちゃうよね」


そう言いながらも、小夜子はポロポロと涙をこぼした。


「そっか、強くなくても良いのか」


彼女は自分の背後にあるカラーボックスの上のティッシュを1枚抜き取ると、それで両目を押さえた。


「じゃあ、ちょっとだけ、弱音吐いても良いかな?」


小夜子は泣きながらも、努めて明るい声音で言葉を紡ぐ。


「プリズムの人はみんな紳士だから、すっかり忘れてたよ」

「小夜子さん…」

「男の人って、やっぱ恐いね…」


泣き笑いのその表情を見た瞬間、思わず進藤は小夜子に近付き、その体を強く抱きしめていた。


「進藤君……?」
< 80 / 254 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop