死が二人を分かつまで
つい今しがた男性への恐怖心を露にしたばかりの小夜子に対し、そのような行動は軽率だったのではないかと進藤は一瞬後悔した。

しかし、時間は戻せない。


「俺のことも、恐い…?」


顔が見えないので、背中にまわした手で小夜子の心中を探る。


「ううん」


彼女も進藤の背中に両手をまわした。


「進藤君は大丈夫なの……。どうしてだと思う?」

「やっぱ、弟みたいだから?」

「ちがう」


縋るようなその口調に誘われて顔を上げると、小夜子の視線とぶつかった。


「ちがうよ」


とても美しい表情だった。


「一人の男の人として、進藤君のことが、好きだよ」


その場の空気が震えた。


「こんなこと言われても、迷惑だよね……」


小夜子は弱々しく微笑んだ。


「そんなことない!」


進藤は先ほどよりも、深く、強く、彼女を抱きしめた。


そして耳元で、震える声で囁く。


「俺も、一人の女の人として、小夜子さんのことが、好きだよ……」


その日から、進藤にとってバラ色の日々が始まった。


ちょうど大学が夏休みに入り、彼は小夜子のアパートに入り浸るようになった。
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