死が二人を分かつまで
茨城にある進藤の実家は蕎麦屋を営んでいる。


3歳年上の明美は結婚していたが他所の家に嫁いだのではなく、旦那が婿養子となり実家で両親と同居していた。


明美の夫はもともとその蕎麦屋で修業をしていた身で、結婚を機に、そのまま家業を継ぐ、という図式が出来上がったのだった。


当時高校生だった進藤は、かなり安堵したのを覚えている。


両親には長男だからといって無理して家業を継ぐ必要はないと言われていたが、特別なりたいものがあった訳ではなかった。


何となく都会に出て生活してみたいとは思っていたが、そんな曖昧な理由で本当に跡を継がなくても良いのだろうかと悩んでいたのだ。


しかし、姉夫婦が店を守ってくれるのならば、心置きなく家を出られる。


明美の結婚は誰にとっても幸福な結果をもたらしたという訳だ。


明美は上京のついでに実家から、仕送りする予定だった現金や手で持てる範囲で食料などを運んで来てくれた。


「あんたのアパートがもっと広ければ、ホテルに泊まらなくても済んだんだけどね」


6畳一間と、小さな台所が設置してあるだけの室内を見渡して、明美はため息をもらした。
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