死が二人を分かつまで
「大丈夫だよ。バーって言ったって、ようするに飲食店だもん。くくりはうちの蕎麦屋とおんなじだよ」

「そういうもんかしらねぇ……」


明美は頬に手をあて、いまいち納得できないような声音でそう呟いた。


それから小一時間ほど経ち、明美がホテルに戻るというので、進藤はタクシー会社に電話をかけた。

表通りまで送って行く為に身支度を整えていると、控え目に玄関のドアをノックする音が聞こえて来る。


進藤はドキリとした。


彼の部屋を訪ねて来る者はそう多くない。


『もしかして…』


ドアを開けると案の定、そこには彼女が佇んでいた。


「小夜子さん」


進藤は思わず腕時計をチラリと見る。


まもなく夜の10時になる所であった。


「ど、どうしたの?」


進藤の言葉に、彼女は弱々しく微笑んだ。


「ごめんね、突然…。ちょっと話があって。今大丈夫?」

「いや、それが…」

「健一、お客さん?」


玄関口まで出て来た明美は、小夜子の姿を見てギョッとしたように立ちすくんだ。


「……その方は?」


そして硬い声音で進藤に問い掛ける。
< 93 / 254 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop