死が二人を分かつまで
自分自身、説明のつかない不安の渦の中にいるのだから、それ以上何かを背負い込む精神的余裕はなかった。


進藤がさっさと部屋を出たので明美も仕方なくそれに従い、微妙な距離を保ったまま無言で歩を進め、アパートの敷地を抜けて表通りに出た。


進藤は、もしかしたら小夜子に追い付くのではないかと思ったが、彼女の姿はすでになかった。


タクシーが到着し、明美がそれに乗り込む。


「健一……」


そう呟いて、彼女はしばし無言になった。


ほどなくしてふっとため息をつくと、運転手に「行って下さい」と告げる。


走り去るタクシーを、進藤はぼんやりと眺めていた。


部屋に戻り、小夜子に電話をかけてみたが、彼女は出なかった。


直接訪ねようかとも思ったが、もしホテルに着いた明美から電話があった場合、不在がバレると何をしていたのかと問い詰められる恐れがある。


トランシーバーのように、家の外でも移動しながらでも、相手と話せる電話があれば良いのに、と進藤はぼんやりと思った。


次の日、大学に行く前に進藤は小夜子のアパートを訪ねたが、彼女は姿を現さなかった。
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