死が二人を分かつまで
「あ、お客さんすみません。まだ開店時間じゃないんですよ」


突然、マスターが入口付近に向けて声を掛ける。


釣られてそちらに視線を向けた進藤は、心底仰天した。


姉の明美が険しい表情を浮かべ、その場に仁王立ちしていたからだ。


突然連絡を取りたくなった時のために、実家にはバイト先の住所はきちんと伝えてあった。


なので、明美がここを訪ねて来るのはさほど不思議なことではない。


彼女自身は土地勘は無いが、移動はもっぱらタクシーである。


住所さえ告げれば後はプロの運転手が目的地まで運んでくれるのだ。


しかし、今、このタイミングで明美が現れたのが進藤にとっては驚きであり、最悪の事態だった。


夕方の新幹線で茨城に帰る予定だったので、すっかり油断していた。


明美はツカツカと歩み寄ると、進藤と小夜子の間に割って入った。


「失礼ですが、弟とはどういうご関係ですか?」


そして小夜子に向かって詰問する。


「姉貴っ。やめろよ!」

「あんたは黙ってな!」


明美はピシャリと言い放った。
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