俺のこと、好きなくせに
俺は駐輪場に止めておいた自転車に跨がり、ペダルを漕いだ。


病院の敷地を抜けて、その前を通る県道まで出た所で、ふと気がつく。

そういえば、ここからあの場所は近かったな……。

俺は本来の帰宅ルートを外れ、そのまま病院前の県道を、建物に沿って左手に進んだ。


5分くらい走った所に住宅街があって、さらにその中ほどに、ブランコと砂場とあずまやだけの、小さな公園があった。


クリスマスの日に、瞳とファーストキスを交わした、あの想い出深い公園。

この住宅街の、さらに奥に瞳の家があり、彼女の案内でこの場所を知ったのだ。


もともと遊具が少なく、しかも19時を過ぎていたので子どもの姿はなかった。


大人だって、わざわざこんな時間にこんな場所で休憩を取ったりはしないだろう。


『結構穴場なんだよ。私のお気に入りの場所』


あの時の瞳の楽しそうな声が甦る。


「親と喧嘩しちゃった時とか、ここでしばらく過ごしたりね」

「おま……。女子がこんな人気の無い所で1人でいるなんて危ないじゃないか」


「大丈夫だよ~。周りこんなに家があるし。必ずケータイも持ってるし」

「いざその時になったらテンパって電話なんかかけてる暇ねぇよ。しかもいきなり後ろから殴られたりなんかしたら……」
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