恋色カフェ
事務所の中での人目を忍んだ情事は、程無くして、スタッフの扉をノックした音で終わりを迎えた。
何の動揺も見せず、涼しい顔でスタッフと話している店長を見ると、こういうシチュエーションに慣れているのだろうか、なんて、勘ぐってしまう。
こっちは動揺がうまく隠せなくて、仕方なく金庫のある部屋に逃げこもうとしているのに。
甘い余韻とほんの少しの苦味を胸に抱えながら、倉庫兼金庫部屋に行こうとした私に、これ、と店長は書類を渡した。
私に書類なんて何かあったっけ、とキーを通し、扉を開けてから視線を書類に落とす。
「……っ」
息が、詰まった。
そこには、
“今夜、デートしよう”
と、付箋に殴り書きの文字。
「……ズルい」
余裕で、強引で。
悔しいのに、緩んでしまった頬。この顔を誰にも見られなくて良かったと、私は一人、金庫部屋で胸を撫で下ろした。