恋色カフェ



事務所の中での人目を忍んだ情事は、程無くして、スタッフの扉をノックした音で終わりを迎えた。



何の動揺も見せず、涼しい顔でスタッフと話している店長を見ると、こういうシチュエーションに慣れているのだろうか、なんて、勘ぐってしまう。


こっちは動揺がうまく隠せなくて、仕方なく金庫のある部屋に逃げこもうとしているのに。



甘い余韻とほんの少しの苦味を胸に抱えながら、倉庫兼金庫部屋に行こうとした私に、これ、と店長は書類を渡した。


私に書類なんて何かあったっけ、とキーを通し、扉を開けてから視線を書類に落とす。



「……っ」


息が、詰まった。


そこには、

“今夜、デートしよう”

と、付箋に殴り書きの文字。



「……ズルい」


余裕で、強引で。


悔しいのに、緩んでしまった頬。この顔を誰にも見られなくて良かったと、私は一人、金庫部屋で胸を撫で下ろした。


< 105 / 575 >

この作品をシェア

pagetop