恋色カフェ
「俺も、聖人君子って訳じゃない。……いろいろと、自棄を起こすことだってある」
事務所には、店長が凭れている椅子の、ギィという音だけが響いている。
「……幻滅した?」
一瞬、その言葉が不安げなものに聞こえて、驚いて店長に視線を合わせると、微笑みの中に困惑が少しだけ滲んで見えた。
どう答えたらいいのか。心がごちゃついて何も言葉が出てこない。押し黙った私を見て、店長はまた苦笑いを浮かべている。
「フロア行ってくるから、とりあえずその書類、整理しといて」
彼は強く灰皿にタバコを押し付けると、それ以上は何も言わず、事務所を出て行ってしまった。