恋色カフェ
「……何でも、ないです」
どうしてそう思ったのか。言ってしまえば、私の現状だって知ってもらえたのに。
店長は私を離すと、小さくため息を吐いた。
「……時差ボケ。こういうの一日じゃ直らないでしょ」
そう言って、店長は思い出したように欠伸をしている。
「昨夜、21時には土屋さんを帰したよ」
今度はクスクスと笑いながら、私の頬に手を当て、顔を近づけた。
「ん……ッっ」
耳へ息を吹き込まれ、ゾクリ、震えた背中。
「声、聞こえるよ」
誰のせいなんだ、と言いたかったのに。いつもより艶かしさを孕んだ瞳に捉われて、声が、出ない。
「俺を信じなかった、お仕置き」
店長らしいその言葉は、私の心に波紋を描いていった。