恋色カフェ
緊張感を漂わせたまま、みんな自分の持ち場へとパラパラ散っていく。
魂が欠けてしまったみたいにそこから動けず、私はただ店長の後ろ姿をぼんやり見つめていた。
『そんなありもしない話────』
頭に、さっきの店長の台詞が浮かぶ。胸に痛みが走ってから、そうか、引っ掛かったのはそれだったか、と気づいた。
──“ありもしない”ことだったんですか。
何もかも、今までのこと全部が。
「──彗さん」
名前を呼ばれてふと我に返り、私はその声の方へ振り向いた。
「怜ちゃん……」
そこにいたのは、フロアスタッフの怜ちゃん。
「……ごめんなさい」
俯き気味に、やっと振り絞ったような声で、彼女は急にそう言った。