恋色カフェ
万由さんの弾んだ声が、耳につく。さっきミーティングで話したことは、フロア業務に密接に関係することなんだろうか。
──それよりも
今すぐ逃げ出したい、ここから。
容赦なく込み上がってくる負の感情を胸の奥に押しやり、私はパソコンの電源を入れた。
「あ、そうだ、店長」
事務所の扉の前まで来てから、万由さんが店長の方へ振り返ったのが視界の隅に映る。
「昨日は送って下さって、ありがとうございました」
胸に走ったのは、刃物を突き立てられたような痛み。頼んでもいないのに、心はその言葉を勝手に何度も反芻する。
「……ああ」
普段と何も変わっていない筈なのに、どこか、扉が閉まる音が嬉しげに響いた気がした。