恋色カフェ


走ってきたのか、彼はわずかに息が上がっている。しばし見つめ合う格好になって、いたたまれず、視線を外した。



「ど、うしたの。そんなに急いで」

「いや……あ、それが新しい食器っすか」

「あ、うん。取りあえずここに置いといていいって言われたんだけど、ここじゃ間違って誰かに蹴られそうだよね」


場に流れた空気が、とにかく何か話せと私を追い立てる。頭の中の単語を拾い集め、必死に言葉を並べた。


「もうちょっと箱を奥に押せばいいかな?」


箱の隅に手を掛けた瞬間────私の手の上に重なった、手。



「……、」


驚き過ぎて声が出ない。この状況は一体どういうことだろう。

勝沼君の方を見れば、彼は重なりあう手の方に視線を向けている。


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