恋色カフェ
仄かなタバコの匂いと、甘い“シークレット”の香り。
車の中まで店長の香りがするなんて……これが平静でいられる訳がない。
森谷店長はと言えば、私の家の場所を訊いた後は、口を閉じたまま。
やっぱり疲れてたんじゃないの、と隣を伺おうとして、顔を見たら余計にあの日のことを思い出しそうで、止めた。
しばらく、エンジンとアスファルトの摩擦音だけに意識を注いでいた。
前方に赤信号を見た瞬間、
もうだめだ──、と。
沈黙に耐えきれなくなった私は、よりによって、このことを口にしてしまった。
「あの……店長。
離婚したって、本当ですか……?」