恋色カフェ
「彗さん、“ロッカー”にどうぞ」
後ろから怜ちゃんの声がして、振り向いた。『ロッカー』というのは、アンバーだけで通用する隠語で『休憩』という意味。休憩室にロッカーが置いてあるから、というのが、理由だ。
「じゃ、ロッカーに行ってきます」
お客様が聞いたら奇妙に思うかもしれない台詞を口にしながら、腕時計に視線を落としていると、
「あー、高宮さん待って待って。お客さん来てる」
駆け寄ってきたホールスタッフが、慌てた声で私を呼び止めた。
「お客さん、ですか?」
「うん、男女2人組の。ごめん、忙しくて名前は訊けなかったけど。窓際の席に通したよ」
誰だろう、と思いながらホールに近づき、窓際の席を見る。そこには何と、居酒屋仲間のあかねが座っていて、私に向かって笑顔で手を振っている。
一緒の男性は、こちらからは後ろ姿しか見えない。一体、誰だろう。