恋色カフェ
てっちゃんは渋い顔をしながら、コーヒーを啜る。
「俺、最近引っ越したから、職場に来たんだろうね」
吐かれたため息は、私に向けられている訳じゃないのに。何だか、胸が痛くなってしまう。
「いよいよもって、本気でヤバいんじゃないかな、あいつ。俺を見た瞬間土下座してさ、『頼む、金貸してくれ』って。もちろん、貸さなかったけど」
私はあの時の、奇妙な程明るく笑った秀人の顔を思い出していた。
「彗のところにも、お金借りに来たんでしょ……?」
ゆらゆらと震えるあかねの不安げな声で、ぼんやりした思考の世界から引き戻される。
「……ううん。ただ……一緒にご飯食べようって……」
秀人は居酒屋の後、無国籍料理のお店で働いていた。給料だって、普通に暮らす分には困らない額は貰っていた筈──なのに。
前も思ったけど、そんなに切羽詰まっていたなら、何故秀人は私にお金を貸してほしい、と言わなかったのだろう。何か、私には言えない理由があるのだろうか。