恋色カフェ
店を出て、思い切って店長に電話を掛ける。電源が切られているのか、無情にも女性のアナウンスだけが響いた。
もしかしたら運転中かもしれないし、まだ仕事をしているのかもしれない。湧き上がる感情を押し殺し、私はこれ以上、店長に電話を掛けるのはやめておいた。
昼間の、あかね達の話が気になって、まだ電車の本数はたくさんあったものの、タクシーで帰ることにした。ここからでも家までは十分に距離がある。懐はちょっと痛むけど、仕方ない。
幸い、運転手さんは話好きではなかったようで、行先を訊かれただけで、後は何も喋らなかった。
今は、この静けさがありがたい。だって、あまりにも今日は、いろんなことを聞き過ぎた。
窓の外を見れば、いつか店長と車で辿った景色が広がっていた。
店長に、お仕置き、と、無理矢理キスされたことを思い出す。
店長はあの時、どんな気持ちだったんだろう。考えても、モヤモヤしたものしか浮かんでこない。
理英さんの話がどこかしら釈然としないのは、もしかしたら万由さんのことがあるからかもしれない。
鞄から携帯を取り出してみるも、折り返しの着信は無かった。
全ては、明日──。