恋色カフェ



ゆうべはなかなか眠れず、ようやく眠りらしき眠りにつけたのは朝方。目覚めた時、時計を見て愕然とした。いつも起きる時間より、時計の針が30分も後を差していたから。

慌ただしく身支度を整え、何とかギリギリ間に合う電車に滑り込み、走ってアンバーの前に辿り着いたのは、遅刻確定の5分前。


息を整えながら、従業員口に入ろうとした時、一瞬見えた人影に振り返った。


「あれ……?」


間違いない。あの後ろ姿は────彼女、だ。



「すみません、あの、遅刻します!」


そう店に電話した時には、既に走り出していた。向こうも私が追いかけているのがわかったのか、飲み屋街を駆け抜けていく。


さっき走って無ければ、もっと簡単に追いつけると思うのに。これでも学生時代は陸上部だったんだから。

そう強がってみたところで、距離は縮まらない。胸が苦しい。はあはあと、まるで溺れているみたいに必死で息をする。



「つ、かまえたっ!」


結局、私が万由さんを掴まえることが出来たのは、飲み屋街の端、ジェラートの店の前だった。


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