恋色カフェ



「──さて、帰るか。

彗、そこの伝票取って」


私の真後ろに掛けられていた伝票を外して秀人に渡そうとすると、あれ、という声が聞こえてくる。


……まぁ。これも、最近のお決まりの光景だから驚かない。


「どうしたの?」


一応、流れとして秀人にそう問うと、口をへの字に曲げて、心底困ったような表情をした。



「……ゴメン、財布忘れたらしい」


やっぱり。と、口に出しそうになって、慌てて、え、忘れたの? と驚いてみせる。


「今日は俺が奢るって言ったのにな……」



ここで、

「私もお金持って無いんだけど」

って言ったら、この人はどうするつもりなんだろう。


実際、まだお給料も貰っていない状態で、懐は冷え切っているというのに。


< 49 / 575 >

この作品をシェア

pagetop