恋色カフェ
「──さて、帰るか。
彗、そこの伝票取って」
私の真後ろに掛けられていた伝票を外して秀人に渡そうとすると、あれ、という声が聞こえてくる。
……まぁ。これも、最近のお決まりの光景だから驚かない。
「どうしたの?」
一応、流れとして秀人にそう問うと、口をへの字に曲げて、心底困ったような表情をした。
「……ゴメン、財布忘れたらしい」
やっぱり。と、口に出しそうになって、慌てて、え、忘れたの? と驚いてみせる。
「今日は俺が奢るって言ったのにな……」
ここで、
「私もお金持って無いんだけど」
って言ったら、この人はどうするつもりなんだろう。
実際、まだお給料も貰っていない状態で、懐は冷え切っているというのに。