恋色カフェ
「慰労会の翌日から、店長はいつも以上に優しくて……。リックに気に入られて、まんざらじゃないって顔していたアンタにさっさと見切りをつけて、やっとこっちを向いてくれたんだと思ったの」
反駁したい気持ちではあったものの、話がややこしくなる気がして、私は黙って彼女の話を聞くことにした。
「ずっと幸せだった。残業で遅くなった日は必ず私を家まで送ってくれたし、あの日……そう、店の前であなた達と会ったあの日よ。あれから2人で食事にだって行ったの」
何かを思い出すように遠くを見つめながら、万由さんは薄く笑みを浮かべている。
私は胸に幾分かの痛みを覚えながらも、彼女の少し異様な様子に、冷静さを失うことはなかった。
「……楽しかった。でもね」
遠くを見つめていた視線が、こちらに移る。みるみるうちに、彼女の眉間に深い皺が寄った。
「今はそれを思い出すと、辛いの。辛くて仕方ないのよ……!」
万由さんは、うわあ、と声を上げて泣き出す。普段、落ち着いた印象の彼女からは、想像できない姿だった。
ハンカチを差し出すと、それを凄い勢いで押し戻されてしまう。