恋色カフェ
ちらりとカウンターの方に目をやれば、中の男の人はこちらを窺うこともなく、洗い物をしているようだった。
こんな迷惑なお客なのに、何も言わず受け入れてくれていることが、今はありがたい。
万由さんは少し落ち着いたのか、ハンカチを外した。その目はやはり、こちらを睨んでいる。
「でも……店長の答えは、思っていたものと違ったのよ」
もう、万由さんの瞳からは止めどなく涙が溢れている。私は彼女の迫力に負けないように、その鋭い目をしっかり捉えた。
「“だから、高宮彗の悪い噂を店中に流したのか”って」
「……えっ」
まさか、ここに自分の名前が出てくるとは。心臓が、嫌な音を立てる。
「“お前は、俺と高宮彗を最初から疑いの眼差しで見ていた。だから邪魔な彼女を排除しようとしたんだろう”って」
万由さんは再びハンカチで顔を覆った。
静かな店内に、彼女のシクシクとしおれた泣き声が響いている。