恋色カフェ
「ありがとうございました」
最後のお客様が帰り、ホールスタッフが『close』へとプレートをひっくり返す。時間超過も無く、丁度、アンバー閉店の時間だ。
結局、店が忙しかったこともあり、あれから店長とは一言も会話出来ないまま。それどころか、顏すら合わせていない。
掃除用具入れからモップを取り出し、床に軽くモップを掛ける。お客様の物か、シュシュが棚の隅の方に落ちていた。レジの所にある忘れ物管理箱の中に、それを仕舞う。
私は、何となくレジのカウンターに凭れて、店内を見渡してみた。
「やっぱり好きだな……アンバー」
全ての始まりは、専門学校時代にふらりとこの店に立ち寄ったことだった。
その当時の私は、就職活動もなかなかままならず、焦りと不安でいっぱいだった。
雰囲気が良さそうなお店だな、とは思ったけど、それがこの店に入った大きな理由という訳ではなかった。
――が、一歩店に足を踏み入れた瞬間から、私はアンバーに魅了されていた。