恋色カフェ
アンティーク調のレジ。木の温もりが感じられるテーブル。何より誇ったように漂う、芳しいコーヒーの香り。
私の好きなものばかりが集まっているこの店を、好きにならない訳がなかった。
『いらっしゃいませ』
私を出迎えてくれたのは、細身の体に白いシャツを纏い、髪を後ろに束ねた、まるでモデルのような容姿の男性。その人が店長だということは、他のスタッフからの呼びかけですぐに分かった。
ふと、レジの脇に貼られていた求人ポスターが目に入り、私はオーダーよりも先に「ここで働かせて下さい」と思わず口にしてしまっていた――。
「……勢い、って凄いな」
昔のことを思い出して、口許が緩む。
あの時、私の唐突な申し出に、店長はこう言ったのだ。
『この店は初めて?』
『はい』
『なら、ちゃんとここのコーヒーを飲んでから、話を聞かせてよ』
尤もだと思った。それと同時に、この店の確固たる自信というものを突きつけられた気がした。お店に入った瞬間に鼻をくすぐったあの香りからも、それは垣間見えてはいたけれど。