恋色カフェ
2人の間でどういう話し合いがなされたのか、この言葉からははっきり読み取れない。私は、はあ、と曖昧な返事だけにとどめておいた。
「悪いけど俺は、この店の責任者として、土屋を引き留めてはいないよ」
ならばなぜ、という問いかけが頭に浮かぶ。表情で、私が言おうとしていたことを読み取ったらしい店長は、苦笑気味に顔を歪ませた。
「復帰のことは、彼女から言ってきたことだから」
「え……」
「最初は、高宮さんに連れて来られただけだ、とか、あの人に退職願を破られた、とか、高宮さんに対する恨み節ばかりだったけど」
店長はテーブルにあった灰皿に煙草を押しつける。私は吸殻がくゆるのをただ見つめていた。
「土屋がいない間、店はどういう状況だったのか、とか、良いことも悪いことも含めて説明してやったら、急に泣き出したんだ」
恐らく良いことというのは、リニューアルした後のお客様の反応や売上げのことだろう。
「悪いこと、っていうのは……」
「高宮さんだって、自分の仕事をなげうってフロアのヘルプに入ってくれただろう?
うちは小さい店で、余剰人員がいる訳じゃない。みんな残業したりシフト調整したりして、土屋がいない数日間を穴埋めしてきた。ましてや彼女は正社員だ。バイトが多いこの店で、社員という位置づけはどういうものか、改めて説明してやったんだよ」